Drupalを使う非営利団体が増えている

 以下の文章は、APCのサイト(http://www.apc.org/english/news/index.shtml?x=5039382)に掲載されていたものをざっと翻訳したものです。NGOやNPOがdrupalをどのように使うことができるのか、そのメリットは何かなどが書かれています。Drupalが海外のNGO/NPOにどのように評価されているかがよくわかると思います。

Drupalを使う非営利団体が増えている 〜 さらに多く、さらに熱心に

GOA, India -- APCのメンバーサイト、BytesForAllのPartha Sarkarは、ボランティアにより運営される南アジアのネットワークの共同設立者だ。参加型のサイトにしたいと思っていた彼は、Drupalを選択した。最近の会話の中で彼は、「近々、www.bytesforall.netのオープンをアナウンスし、RSSフィードも提供する予定です」と言っていた。しかし、Sarkarは一人ではない。APCネットワークの他のメンバーも、このツールがコンテンツで協同作業をする上で便利なツールだということを知っているからだ。

Drupalとは何か
 Drupalは、モジュラー構造のコンテント管理システム兼ブログ・エンジンだ。Dries Buytaertによって掲示板システムとして書かれたソフトウェアから生まれた。現在Drupalは、多くの人気サイトで使われている。このソフトはフリーソフトウェアの世界に属し、ドキュメントをはじめとするさまざまなコンテンツの協同作業を可能にする。
 「Drupalはオンラインのコミュニティサイトにとってすばらしい選択です。使い方もやさしく、カスタマイズも簡単です。ユーザーコミュニティは大きく、そのかなりの部分が共通のニーズを持つNGOなのです」とAPCのZoltan Varadyは説明する。
 Web Networksの執行役員であるOliver Zielkeは、「現在、Web NetworksはDrupalでwww.ndp.caを構築、運営しています。このサイトはカナダ国会の選挙である政党によって使われましたが、そのときには膨大なアクセスがありました。また、カナダの先住民支援の作業にも使っていますし、カナダの教員組合は大きな組織ですが、そのための電子商取引サイトのモジュールも作りました」と語る。
 さらに、トロントにあるAPCメンバー、Web Networksは、ガテマラのパートナーネットワークであるEnlace QuicheにDrupalのトレーニングとホスティングを提供している。おかげでガテマラのNGOや先住民は、Drupalの強力なコンテント管理機能を享受できるのである。

APCはどのようにDrupalを使っているか
 Association for Progressive Communications (APC)は2005年、Drupalをベースとして市民社会団体のニーズを満たすためのActionKitとよばれるツールの開発を始めた。
 APCメンバーのAlternatives、GreenNet、Pangea、そしてWeb Networksは、すでにDrupalとCivicSpace(Drupalから派生したCMS)を使っている。「キャンペーンのためのツールに必要とされるほとんどの機能がCivicSpaceにあるのです。われわれがしたことは、APCの国際的なネットワークで使えるように若干手をいれることだけでした」とActionKitコーディネータのZoltan Varadyは言う。
 「NGOのニーズにあわせてモジュールの翻訳や、携帯メールや伝言メッセージといった携帯電話のサポートなどを予定しています」という。
 最近のAPCテクニカルレポートには、「ActionKitプロジェクトは、APCによるオープンソースのコンテント管理システムであるActionAppsに新しい展開をもたらすことになった」と書かれている。つまり「ActionAppsを他のCMSとの間でコンテンツを共有するためにはどうすればいいのか」ということだ。
 ActionAppsの開発は、市民社会団体の要求にこたえて自動的なWebパブリッシングとWebサイト間での情報共有を行うため、1999年に始まった。それから7年、多くのフリーソフトウェアのコンテント管理システム(簡単にWebサイトを運営するためのツール)が利用できるようになったが、APCはAcctionAppsを今後もAPC内外の多くのサイトに提供し続けるという。
 「ActionKitプロジェクトの中で、われわれは開発部門の要求にあわせてもっと良質の翻訳と国際化、携帯電話との統合、およびユーザビリティの研究などにより、さらにCivicSpaceを拡張することを目的にしています。また、ActionAppsとDrupalの間でコンテンツを共有する方法を開発していますが、これは両者の長所を結合させることになります」とZoltanは言う。
 Omar Bickellは、たとえばDrupalのコミュニティのように、大勢の開発者と大量のコードを持つCMSを組み合わせることの必要性を認めている。そのためには、ActionAppsからDrupalへの移行スクリプトを開発することが必要だという。
 OmarはモントリオールのNPOであるKoumbit.orgの共同設立者で、「ケベックのコミュニティグループによるフリーソフトウェアの充当」と「進歩的な意識を持つ自律的なIT労働者」の技術とリソースを集める場を作ろうとしている。
 「NGOやNPO、そして開発者のコミュニティがDrupalを発見するまでには長い時間がかかった。だが、それからはものすごい速度で進んでいる」と言う。
 彼は少し前まで、Drupalは「単なるCMSの一種だったが、今では得られる中では最も協力で柔軟なシステムのひとつだ。特にDrupalのメリットは、われわれの要求に合致しているということだ」という。

Drupalが提供するもの
 スローガンの通り、Drupalのコミュニティは当初から「コミュニティ作り」を追求してきた。その特徴のいくつかを上げると、マルチユーザー編集、アドボカシーコンポーネント、柔軟性とカスタマイズ、多言語のサポート、強力かつ熱心な開発コミュニティ、そして活発なユーザーコミュニティだ。(詳しくはDrupalの主な機能の要約ページを参照)
 Drupalのツールの中には、マルチユーザーのブログとニュースアグリゲータ、フォーラムとメーリングリストの統合、ポッドキャストやビデオキャストなどのニューメディア、プロジェクト管理、コメント機能と顧客管理、電子商取引と寄付の受け付け、イベントとボランティア管理、そして、情報の中央管理などがある。
 サポートについては、「Drupalは、ハンドブック(The Drupal Bibleとも呼ばれている)、活発なメーリングリスト、Drupal開発者のチャットルーム、そしてコンサルタントによってサポートされるのです」と彼は指摘する。
 Oliver Zielkeによれば、「Drupalの長所は、コードの質と全体的なモジュール構造だ。Webサイトでの作業はカスタマイズの連続だが、Drupalは核となるコードに触ることなく、ユーザーの要求にあわせてモジュールを作ることができる」という。
 Oliverは、Web.netが「Drupalに乗るまで」何年もの間、さまざまなCMSの評価を続けてきたという。
 「われわれは、Drupalの柔軟性と性能に十分満足しています。開発コミュニティは大きく、成長を続けており、とても活発で生産的です。CivicSpaceとCiviCRMに参加しよう」と彼は付け加えた。

Drupal、CivicSpace、そしてその仲間たち
 標準的なDrupalには、いくつかの変種がある。あるものは特に非営利団体向きだ。CivicSpaceはDrupalから派生したシステムで、追加のDrupalのモジュールと「設定ウィザード」で構成される。ウィザードにより、Drupalよりもインストールと設定が簡単だ。ただし、Drupalコミュニティによって開発される「最新の偉大な」Drupalが使えるようになるまでに数ヵ月待たなければいけない。
 CiviCRMは、非営利団体にかかわる人々と、彼らの情報交換(メール、寄付、署名、イベントなど)の情報を蓄積する。
 APCのZoltan Varadyは言う: 「Drupalは、NGOが選ぶプラットフォームになりつつあります。特に、多数の人々を対象とするNGOにとっては。Drupalは高度にインターラクティブなコミュニティサイトに最適です。CivicSpaceとCiviCRMプロジェクトはオンライン・アドボカシー機能を中心に強化されています。特にその必要性が広く認められている北米でよく使われています」。
 CivicSpaceはDrupal用のモジュールの集合体で、アドボカシーサイトの開発を目的としているとZoltanは言う。特にボランティア管理ができるイベントカレンダー、調査、署名、プライベートあるいはパブリックなフォーラム、多数宛のメールの発信、寄付集め、本格的なERM(取引先管理)などが特徴的だ。
 しかし彼は、Drupalが「万能薬」ではないことを認めている。FOEIやOxfamのように大規模で組織が複雑なNGOは、たとえばPloneのようなシステムを好む。また、DjangoやRuby for Railsといった軽いフレームワークを好むグループもある。
 「サイトはそれぞれ異なっています。そして何百というフリーソフトウェアとオープンソースのCMSの中には、きっと自分たちのニーズを満たしてくれるものを見つけることができるでしょう」とZoltanは言う。

フリーソフトウェアへの関心がDrupalの利用を加速
 Omarはまた、DrupalやオープンソースのCMSの人気を説明する一般的な部分を指摘する。NPOやNGOのコミュニティにおいて、フリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアは「この数年、確実に増加している」という。
 情報通信(ICT)の分野で20年近い経験を持つOmarは、彼が一番興味があることはフリー/オープンソースソフトウェアによるローカルコミュニティグループの強化、そして洗練されたコーディネーションや意思決定、コミュニケーションと大衆動員ツールを使った国際的な連帯の動きだという。
 ZoltanもOmarと同様に、非営利組織で働く人々は「反企業、反商業的な感覚を持っていることが多く、フリーソフトウェアの利用に積極的だ」という。だが結局のところ、目的にあった便利なものが必要なのだ。彼はフリー/オープンソースソフトウェアは「その意味で、年々よくなっている」と考えている。
 Omarは言う: 「これらの団体は次第にフリー/オープンソースというプロダクションモデルの核心にある基本理念を理解しつつあります。おそらく、さらに注目すべきことは、非営利組織で働く人々の核心的な価値と原則が、フリー/オープンソース・ムーブメント全体の価値や原則と重なる部分から生まれる相乗効果に気が付きつつあるのです」。
 Drupalのサイト管理者であり、開発者であり、エバンジェリストであるインド生まれのWarren Brian Noronhaもこのように言っている: 「その通り。Drupalは、常に非営利団体で愛用されてきました。彼らはたいていすでにDrupalについて知っていますし、何らかの形で使っています」。
 Warrenは、Software in Public Interestという団体でDrupalを使っているが、非営利団体がDrupalを愛用する理由は「管理が容易で柔軟で多機能で、ほとんどすべてのものがちょうど言論が自由であるように自由だからです。Drupalを使えばソフトウェア会社につかまってしまうようなことはないのです」という。
 彼は、「Drupalと非営利コミュニティは、常に共生関係にあるのです」という。彼が働いている非営利団体ではフリーソフトウェアの精神を認めていて、彼が書いたコードはすべて積極的にコミュニティに還元してきたという。
 「非営利団体はDrupal開発者を雇い、コミュニティにコードを還元しているのです」と言う。「Drupalはそうしたコードの恩恵を受け、非営利団体はまた別の人々が公開したより良いコードの恩恵を受けているのです」と彼は説明する。
 たとえば、APCメンバーはActionKitモジュールを典型的なフリー/オープンソースの形で開発している。彼らはDrupalのコミュニティへの貢献を続けることで他のユーザーにも恩恵を与えているのである。
 「残念なことに、ときどきフリーソフトウェアに関するサービスもフリーであることを期待する人がいます」とWarrenは言う。「しかし、コーヒーを飲みながらその哲学を語ったところで、何も確定しないのです」。

参考リンク

Web NetworksによるDrupalサイト
http://www.qsociety.ca
http://www.info-privacy.nu.ca
https://summeracademy.etfo.ca/
http://www.ndp.ca

Koumbit:
http://www.koumbit.org

Resource:
'Introduction to Drupal for Non-Profits: Build Powerful Communities', Warren Brian Noronha
http://www.hyperionreactor.net/files/Introduction_to_drupal_for_non_profits.pdf

Ware

Drupalのサイト
http://drupal.org/

Drupalを使っているサイト一覧
http://www.drupalsites.net/

Drupalテーマの園 - Drupalで利用できるビジュアルデザインのギャラリー
http://themes.drupal.org/

開発者向けドキュメント
http://api.drupal.org/

Web Networks
Koumbit
'Introduction to Drupal for Non-Profits: Build Powerful Communities', by Warren Brian Noronha

Drupal

Author: --- (FN for APCNews)
Contact: fn [at] apc.org
Source: APCNews
Date: 08/04/2006
Location: GOA, India
Category: Free Software